今回も3作紹介します。
・『しろいろの街の、その骨の体温の』 村田沙耶香
新興住宅地に暮らす少女を主人公にした物語です。過剰な自意識、コンプレックス、綱渡りのような人間関係、逃げ場のない閉塞感。思春期の時に感じていたヒリヒリとした痛みを思い出させる小説でした。読んで楽しい気分にはなれないけれど、心の奥に眠っていた感覚や感情を思い出し、心をざわつかせる…それもまた読書の醍醐味です。
・『よだかの片想い』 島本理生
顔に大きなアザがある女性の遅い初恋と成長の物語。外見のコンプレックスと真正面から向き合い、切ない恋を通して成長していく主人公がとても素敵です。また、文章が読みやすく、シンプルだけど心に響くフレーズが多いのが印象的でした。
・『火山のふもとで』 松家仁之
あきどくの最後の一冊、考えあぐねていた時、娘に勧められた本です。設計事務所の話です。この夏行った「瀬戸内アート」豊島美術館での素足の感触が蘇りました。設計コンペ「国立現代図書館」にかけるスタッフの思いには、司書として感じ入るものがありました。