2012年10月26日金曜日

コメント紹介の第7弾!

さて、明日10月27日(土)には大賞発表です。



『おべんとうの時間 2』 阿部了,阿部直美

“弁当”を通してだからこそ語られるひとつひとつのエピソード。それにはそれぞれの人が歩んできた人生や家族の記憶が滲み出ています。普通の人のなんてことのない日常が、かけがえなく愛おしいものだと気づかせてくれる一冊です。一巻と同じ編集スタイルですが、本巻では震災後の東北も訪れており、それがまたこの本に特別な意味を与えていると思います。












『PK』 伊坂幸太郎

絶望か希望か― 伊坂幸太郎はやっぱり希望を選んでくれた、というところが嬉しかった。
誰かが時代のある分岐点で、苦しみながら勇気を出して選んだ、ちょっとした希望。その希望が誰かを刺激し、また新しい希望を生む。そんな希望の連鎖を作りたくなる本。自分も勇気を出して希望を選ぼう!と励まされた。













『ブラック・アゲート』 上田早夕里

ジガバチは獲物に卵を産みつけ、卵からかえった幼虫はその獲物を栄養にして大きくなる。幼虫は最終的には獲物を食い尽くして成虫になる。そんな習性持つ蜂である。
もしも、その獲物が人間であったらどうなるのか。というのがこの物語の出発点だ。そんな蜂が突然変異で生まれたらどうなるか。あまり映像化して欲しくない類の話である。
こんな設定だと、人間対蜂の戦いを連想するかもしれないが、そんな単純なものではない。幼虫に寄生された子どもをなんとかして守ろうと逃げる親子、そして、それを捕まえて隔離しようとする組織…。どちらかというと人間対人間の戦いだ。
追われる側を描いた単なる逃走劇だったらそれほど面白くなかったと思う。だんだんと追う側の事情も明らかになるにつれて没頭して読んでしまった。
そして、子ども同士が話してる場面がとても印象的だった。





『千年鬼』 西條奈加

短編連作なので、1編ずつ読みながらもうちょっと長く読みたい!と終わるのがおしくて。次第にわかってくる物語の全容に引き込まれ、ラストの切ないシーンには眼がうるうるでした。